遺族が受け取る生命保険金は相続財産ではありませんが、亡くなった人が保険料を負担していた場合は「みなし相続財産」として税法上は相続税の対象となります。
ただし、一定の非課税規定が設けられているなど、相続対策として非常に効果を発揮します。
その点について解説していきます。
〈非課税規定〉
生命保険金は遺族の人の生活を保障する資金のため、一定の非課税枠が設けられています。
非課税枠の計算式は以下の通りです。
〈生命保険金の非課税枠〉
500万円×法定相続人の数
この非課税枠を活用することで相続税の負担を少なくすることができます。
具体的な数字を使って見ていきます。
〈具体例〉
前提条件:相続人 子4人 相続財産1.5億円(うち2,000万円は生命保険金)
・生命保険未加入の場合
1.5億円(相続財産)-5,400万円(基礎控除)=5,100万円(課税遺産総額)
(5,100万円×1/4×15%-50万円)×4人=565万円(相続税)
・生命保険に加入している場合
1.5億円(相続財産)-2,000万円(生命保険金の非課税枠)-5,400万円(基礎控除)
=3,100万円(課税遺産総額)
(3,100万円×1/4×10%)×4人=310万円(相続税)
上記の例では生命保険に未加入の場合と加入している場合とで255万円も相続税に違いが
出ています。
このように、生前に財産を生命保険に組み替えておくだけで相続税の負担を減らすこと
が可能となります。
〈受取人について〉
生命保険金の非課税枠は受取人が相続人でないと使えません。そのため子を受取人に指定する必要があります。配偶者も相続人のため非課税枠を使えますが、配偶者はそもそも1億6千万円までの財産の相続であれば相続税はかかりませんので生命保険金が非課税になっても恩恵を受けることができません。
また、孫は相続人ではないため、受取人となっても非課税枠を使うことはできません。さらに相続税額の2割加算という制度が適用されてしまうため、納付する相続税が2割増しになります。そのため、税負担のみを考慮すると孫を受取人に指定するのはデメリットが大きいと言えます。
〈受取人の変更〉
生命保険金は受取人を変更した時点では課税がされません。そのため、現在加入している保険契約の保険金受取人が配偶者となっている場合は節税対策の観点では保険金受取人を子へ変更することをお勧めします。
〈遺産分割協議の対象から外れる(特別受益に該当しない)〉
生命保険金は亡くなった人が保険料を負担していた場合、受取人が保険金相当額の経済的利益を受けていることから「みなし相続財産」として相続税の対象になります。
しかし、民法上は受取人固有の財産として取り扱われるため、遺産分割協議の対象になりません。よって、一定額の財産を確実に渡したいという人がいる場合には、その人を受取人とした保険契約を締結しておくと良いでしょう。
さらに、生命保険金は原則として特別受益にも該当しません。
特別受益とは複数人いる相続人のうち特定の相続人だけが生前贈与や遺贈などによって特別に得られた利益のことです。
特別受益を受けた人は遺産分割協議の際、既に受けた利益を差し引いた金額を相続することになる場合がありますが、生命保険金を受け取っても特別受益には該当しません。
〈納税資金対策として有効〉
生命保険金は他の財産と異なり、相続が発生してから受取人が1人で申請してすぐにお金を受け取ることができます。預金などは口座が凍結されてしまうと相続人1人だけでは手続きを完結することが難しくなります。
また、贈与などと異なり生前にお金を渡すわけではないため確実に納税資金に充てることができます。
以上のように生命保険金は相続対策として色々な側面で効果を発揮します。
特に非課税枠がまだ余っている人は即効性のある相続税対策として非常に有効となりますので加入を検討することをお勧めします。