養子縁組とは養親と養子との間に法律上の親子関係を作り出す制度を言います。
養子縁組を行うことで相続税の節税になるという話を聞いたことがあると思います。
今回はその理由や注意点などについて解説していきます。
〈相続税の軽減効果〉
養子縁組を行うことで相続税が軽減されるのは主に以下の理由です。
①基礎控除額が増える
相続税を計算する際の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算され
るため、養子縁組により法定相続人が増えることで基礎控除額も増加し、相続税が軽減され
ます。
②生命保険金・死亡退職金の非課税枠が増える
相続人が受け取った生命保険金・死亡退職金については、それぞれ「500万円×法定相続
人の数」まで非課税とされています。養子縁組により法定相続人が増えることで非課税枠も
増加することになります。その結果として相続税の軽減につながる可能性があります。
③相続税の計算の仕組みにより税率が下がる可能性がある
相続税の総額は基礎控除後の課税遺産総額を法定相続人が法定相続分に従って分割したも
のとみなした場合における各取得金額に累進税率を適用して計算します。
したがって、養子縁組により法定相続人が増えることで適用される累進税率が低くなり、
相続税の軽減につながる可能性があります。
④障害者控除・未成年者控除の適用
障害者控除や未成年者控除は、相続又は遺贈により財産を取得した人が、亡くなった人の
法定相続人に該当し、かつ、障害者又は未成年者に該当する場合に適用される税額控除で、
障害者については10万円(特別障害者は20万円)に85歳に達するまでの年数を乗じて算出した
金額を、未成年者については10万円に18歳に達するまでの年数を乗じて算出した金額をそれ
ぞれ控除した金額をもってその納付すべき相続税額とする制度です。
この場合、控除額がその障害者や未成年者の相続税額を超えるときはその人の扶養義務者
(配偶者、直系血族、兄弟姉妹など)の相続税額から控除できます。
例えば、孫は法定相続人ではないため、本来、障害者控除や未成年者控除は適用できませ
んが、あらかじめ養子縁組をしておくことで適用が可能となります。ただし、財産を相続し
ない場合は適用できませんので少しでも相続させる必要があります。さらに控除しきれない
金額は扶養義務者の相続税から控除できるため、うまく活用すれば相続税を大幅に軽減でき
る可能性があります。
〈普通養子縁組と特別養子縁組〉
養子縁組には普通養子縁組と特別養子縁組の2種類があります。
普通養子縁組とは、縁組後も実親との親子関係が存続したまま、養親との間で新たに法律上
の親子関係を生じさせることを言います。
特別養子縁組とは、子どもの福祉のための制度で、縁組後は実親との関係は解消され、養親
との間で新たに法律上の親子関係を生じさせることを言います。
したがって、普通養子縁組の場合、子は実親、養親両方の相続人になりますが、特別養子縁組の場合、実親の相続人にはなりません。
また、この2種類の養子縁組の違いが相続税の計算にどのように影響するかについて、次の
項目で解説していきます。
〈養子の数の算入制限〉
民法では養子にすることができる人数に制限はありませんが、相続税法では無制限に養子の
人数を増やされると過度な節税につながるため制限が設けられています。
これは、基礎控除額や、生命保険金・死亡退職金の非課税枠を計算する際の人数の制限ということになります。制限としては次の通りです。
・実子及び実子とみなされる人がいる場合:1人まで
・実子及び実子とみなされる人がいない場合:2人まで
なお、実子とみなされる人とは以下のような人です。
①特別養子
②配偶者の連れ子(特別養子を含む)で被相続人の養子となった人
③実子又は養子の代襲相続権を有する人
以上のことから特別養子は実子と同様の扱いを受けますが、普通養子の場合は1人~2人までしか基礎控除額などを計算する際の法定相続人の数に含めることができないこととなります。
〈注意点〉
相続税の計算上はメリットが多い養子縁組ですが、注意点もあります。
それは、養子縁組を行うと他の相続人の相続分や遺留分を減らしてしまう点です。
例えば、長男と次男がいる場合、長男の子のみを孫養子にしてしまうと長男家族の相続分が
増えるのと引き換えに、次男の相続分や遺留分が減ってしまうことになります。
この場合、あらかじめ次男の許可を取っておいてりしなければ、後々、相続トラブルに発展してしまう可能性があるため注意が必要です。
また、養子縁組をして養子となった人は養親の氏を名乗らなくてはならない等、養子縁組をする際は様々なことを総合的に判断して行う必要があります。