相続が終わり、実家や土地を引き継いだあと、
そんな経験はありませんか?
実際、当事務所にも、
「相続登記をした直後から、不動産業者からのDMが一気に届いた」
「売るつもりはなかったのに、不安になってしまった」
といったご相談が寄せられることがあります。
多くの方が感じているこの違和感にはきちんとした理由があります。
「どこにも相談していないのに、なぜわかったの?」
「売却したほうがいいのか、放置すればいいのかわからない」
「個人情報が漏洩していないか心配・・・」
相続後の不動産をめぐって、こうした違和感や不安を抱える方は少なくありません。
そして多くの方が、
「どこの不動産会社に頼めばいいか」
という点に意識が向きがちですが、実はそれ以前に知っておいて欲しい重要なポイントがあります。
それは、
という事実です。
本記事では、
・なぜ相続後に不動産のDMやチラシが届くのか
・そのDMにどう向き合えばいいのか
・不動産売却で「知らずに損しない」ための税金の考え方
を税理士がわかりやすく解説します。

ハイフィールド税理士法人 仙台事務所代表
東北税理士会 仙台北支部所属
税理士 高橋 祥太
これまで多数の相続税申告に携わってきた経験をもとに、お客様のお悩みに寄り添って対応いたします。
相続税についてお困りの方は当事務所の無料相談をご利用ください。
なぜ相続後に不動産のDMやチラシが届く?

(1)不動産業者が注目する受付帳
相続登記を終えたあと、
「なぜこのタイムミングで不動産業者からDMやチラシが届くのだろう?」
と不思議に感じた経験はありませんか。
実はその背景には法務局に備え付けられている「受付帳」の存在があります。
不動産業者は、法務局に対して不動産登記の受付帳の開示をすることで、相続登記が行われた事実を確認することができます。
この手続きは特別な資格がなくても可能で、1件あたり数百円程度の手数料を支払えば、誰でも閲覧できる仕組みになっています。
「誰かが個人情報を漏らしているのでは?」と不安になるかもしれませんが、これがDMが届く理由です。
(2)受付帳とはどんなもの?
受付帳とは、登記申請がなされた際に登記官が受付を行い、作成する帳簿のことをいいます。
ここには主に次のような情報が記載されます。
・登記の目的(相続登記など)
・申請を受け付けた年月日
・受付番号
・不動産の所在事項
不動産業者はこの受付帳により取得した情報から、営業対象を検討しています。
相続登記が行われている場合は、その後に売却という流れになる可能性が高いため、DMが届くのです。
(3)現行の制度では直ちに違法になるわけではない
現行の制度では、このような形で情報を取得し、不動産会社がDMを送付する行為自体は、直ちに違法と判断されるものではありません。
もっとも、
「自分はどこにも情報を出していないはずなのに」
「知らないうちに相続の事実を把握されている」
と感じれば、不安や違和感を覚えるのは当然でしょう。
こうした声が多く寄せられてきたこともあり、相続登記をめぐる情報の取り扱いについては、今後、制度の考え方が見直されることになっています。
2026年10月以降、相続後のDMは減っていく見込み

2026年10月から、法務局の受付帳の公開が制限され、
・登記の目的(相続登記など)
・不動産の所在事項
が削除されます。
これにより、相続後に不動産業者からDMやチラシが届くといった状況は徐々に減っていくと考えられています。
ただし、すでに取得された情報や他の方法による営業が完全になくなるわけではない点には注意が必要です。
DMが届くと「早く売らないといけない」といった心理的負担も緩和され、損をせずに不動産を売却できると安心する方もいるのではないでしょうか。
しかし、「DMが減る=不動産売却で損をしなくなる」というわけではもちろんありません。
本当に重要なのはここからです。
相続した不動産は売り方で税金が大きく変わる

相続後の不動産売却は、単なる「不動産取引」ではありません。
相続税・譲渡所得税という2種類の税金が密接に関係し、選択を間違えると数百万円単位で手取りが変わることもあります。
せっかく、希望通りの金額で売却できたとしても、それ以上に税負担が大きくなってしまえば意味がありません。
相続した不動産の相続税や譲渡所得税を抑えるには、主に次の2つの制度の利用を検討することが大切です。
(1)相続税を抑える小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例は、相続税において非常に有名な制度です。
一定の要件を満たす宅地について、評価額を最大80%減額できるため、相続税額に大きな差が生じます。
たとえば、
相続税評価額が5,000万円の土地であっても、この特例が使えれば評価額は1,000万円まで圧縮される可能性があります。
ただし、注意点もあります。
・相続後すぐに売却してしまうと、特例が使えなくなるケースがある
・誰が相続するか、相続後どう使うかで適用の可否が変わる
・相続税申告が必須
「早く売ったほうが楽だから」と安易に売却してしまうと、本来使えたはずの特例を自ら放棄してしまうことになりかねません。
つまり、「売却するかどうか」を決める前に、税務上の選択肢を一度整理しておくことが重要なのです。
小規模宅地等の特例について詳しくは次の記事で解説しています。
(2)譲渡所得税を抑える空き家特例
一方、売却時の税金を大きく左右するのが、いわゆる空き家特例です。
この特例を使うと、不動産を売却した際の譲渡所得から最大3,000万円を控除することができます。
特に、相続後空き家になった実家を売却するケースでは、この特例が使えるかどうかで、譲渡所得税が「数百万円変わる」ことも珍しくありません。
しかし、この特例も要件は非常に細かく設定されています。
・亡くなった人が1人で住んでいた自宅であること
・相続から売却まで空き家であること
・昭和56年5月31日以前に建築された建物であること
・耐震基準を満たす建物にリフォームして売却する又は建物を取り壊して更地にして売却すること
・相続から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
・売却の相手先が配偶者や親、子ではないこと
・売却代金が1億円以下であること
これらの要件を知らずに売却を進めてしまい、「あとから特例が使えないと分かった」というケースは決して珍しくはありません。
売る前から特例の適用を逆算して準備することが重要になります。
譲渡所得税の計算方法や空き家特例について詳しくは次の記事で解説しています。
実際に、相続後すぐに売却した結果、小規模宅地等の特例や空き家特例が使えず、数百万円の税負担差が生じてしまったというご相談もあります。
まとめ:相続した不動産の売却は「売る前」が9割
相続した不動産は、売却活動を始める前の段階で、結果の9割が決まると言っても過言ではありません。
・誰が相続するのか
・特例の適用可否の判断
・税金を踏まえた売却時期の判断
これらを整理せずに進めてしまうと、後から「知らなかった」「そんな制度があったなんて」と後悔することになります。
相続した不動産は「早く売る」よりも「正しく売る」ことが何より大切です。
DMが届かなくなる時代だからこそ、自分から正しい情報を取りに行く姿勢が、損をしない最大の防御策になるのです。
相続した不動産について、「今すぐ売るべきか」「どの特例が使える可能性があるか」を整理したい場合は、売却前の段階で一度専門家に相談することをおすすめします。








