【併用可能】相続税の配偶者控除と障害者控除の併用について解説します

相続税の申告を行う配偶者は高齢の場合が多く、病気などによって障害者に該当していることがよくあります。

配偶者は相続税の配偶者控除によって相続税がかからないケースが多く、障害者控除についてスルーしてしまうといったこともあり得るのではないでしょうか。

本記事では相続税の配偶者控除と障害者控除の併用について解説していきます。

ぜひ参考にしてみてください。

目次

相続税の配偶者控除とは

相続税の配偶者控除は、財産を相続した配偶者に高額が相続税がかからないようにして、配偶者の生活基盤の安定を図るために設けられている特例です。

この特例により、配偶者は次のいずれか多い金額までの財産の相続については相続税がかからなくなります。

1億6千万円

配偶者の法定相続分

多くの場合、配偶者控除によって配偶者には相続税がかかりません。

配偶者控除について詳しくは次の記事で解説しています。

相続税の障害者控除とは

相続税の障害者控除とは、相続人である障害者の相続税から次の算式で計算した金額を控除できる制度のことをいいます。

10万円(特別障害者の場合は20万円)×(85歳-相続時の年齢)

また、障害者控除を適用するための要件は次の通りです。

・障害者が相続又は遺贈で財産を取得すること

・財産を取得する時点で障害者であること

・障害者が法定相続人であること

・財産を取得した時点で国内に住所があること

そして障害者控除は、相続人である障害者の相続税から控除しきれない場合、控除しきれない金額を障害者の扶養義務者(配偶者、直系血族、兄弟姉妹など)の相続税から控除することができます。

なお、相続税における扶養義務者は実際に扶養しているかどうかは関係なく、障害者の配偶者、直系血族、兄弟姉妹であれば扶養義務者に該当します。

障害者控除について詳しくは次の記事で解説しています。

相続税の配偶者控除と障害者控除は併用ができる

次に相続税の配偶者控除と障害者控除の併用について解説していきます。

結論から言うと、配偶者が障害者の場合、相続税の配偶者控除と障害者控除は併用ができます。

配偶者が配偶者控除の適用を受けて納付する相続税額がない場合は、障害者控除を受けられないのではないかと考える人もいるのではないでしょうか。

しかし、配偶者が配偶者控除の適用を受けて相続税が0円の場合、障害者控除額は控除しきれない金額として、配偶者の扶養義務者の相続税から控除することができます。

相続税法基本通達19の3-4に次のような規定があるためです。

相続又は遺贈により財産を取得した者が当該相続に係る被相続人の民法第5編第2章の規定による相続人に該当し、かつ、18歳未満の者である場合においては、その者について法第15条から第19条の2まで規定により算出した相続税額がない場合においても、その者に係る未成年者控除額は、法第19条の3第2項の規定によりその者の扶養義務者の相続税額から控除するものとする。(相続税法基本通達19の3-4)

上記の基本通達は相続税の未成年者控除の通達です。

通達ではわかりにくいため要約すると次の通りです。

配偶者が未成年の場合において、配偶者控除(第19条の2)を適用して計算した相続税が0円のときは、未成年者控除額は控除しきれない金額として、その扶養義務者の相続税から控除できる

そして、相続税の障害者控除の規定である相続税法第19条の4第3項には上記の未成年者控除の規定を準用することが定められています。

配偶者が障害者の場合でも、配偶者控除によって配偶者は相続税が0円のため、障害者控除の適用を忘れるケースは非常に多いです。

配偶者が障害者控除の適用を忘れると相続税で大きく損をしてしまうため注意しましょう。

配偶者に障害者控除を適用しない場合と適用する場合の相続税の計算例

それでは次のケースで配偶者に障害者控除を適用しない場合と適用する場合の相続税について計算してみます。

相続財産は1億円

相続人は配偶者と子1人の合計2人

相続財産は配偶者と子がそれぞれ5,000万円ずつ取得

配偶者は相続開始時に70歳で特別障害者に該当(障害者控除額は300万円)

(1)配偶者に障害者控除を適用しない場合

(2)配偶者に障害者控除を適用する場合

上記の通り、配偶者は障害者控除を適用しても適用しなくても相続税は0円です。

しかし、配偶者が障害者控除を適用することによって、配偶者の相続税から控除しきれない金額として、子の相続税から控除できます。

結果として子の相続税は300万円減少することになりました。

障害者控除に申告要件はないが配偶者控除には申告要件がある

ここまで相続税の配偶者控除と障害者控除は併用できるということについて解説しました。

配偶者控除と障害者控除を併用した結果、相続人全員の相続税が0円になるということも起こりえます。

そのような場合、相続税の申告は不要なのでしょうか。

答えは相続税の申告は必要ということになります。

なぜなら、障害者控除には申告要件はありませんが、配偶者控除には申告要件があるためです。

配偶者控除は相続税の申告をしないと適用を受けることができませんので注意しましょう。

おわりに

本記事では相続税の配偶者控除と障害者控除の併用について解説しました。

配偶者が障害者である場合は配偶者控除と障害者控除は併用ができます。

配偶者の相続税から控除しきれない障害者控除の金額は、他の相続人(扶養義務者)の相続税から控除することが可能ですので、配偶者の障害者控除は忘れずに適用しましょう。

この記事の執筆者

東北税理士会 仙台北支部所属
ハイフィールド税理士法人仙台事務所代表
税理士 高橋 祥太

大学在学中に相続税に強い税理士になることを決意。
その後8年をかけて税理士試験に官報合格。
これまで数多くの相続税申告に携わりました。
お客様に依頼して良かったと思われるように日々、研鑽に励んでいます。

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