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生命保険で相続税対策!節税になる理由やメリット、注意点について解説

「生命保険に加入すると相続税の節税になる」という話を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。

そのような人の中には「生命保険に加入を検討しているけど本当に節税になるの?」、「保険金受取人は誰にすれば良いの?」、「どんな保険に加入すれば良いの?」など、実際のところわからない点も多いと思います。

結論、生命保険は相続税の節税として非常に有効なものになります。

今回は、生命保険が相続税の節税になる理由やメリット、注意点などについて解説していきます。

相続税対策として生命保険に加入を検討している人は是非、参考にしてみてください。

目次

生命保険金は相続税の対象になる


生命保険金は契約内容によって相続税・贈与税・所得税の3種類の税金が発生する場合があります。

相続税の対象になる生命保険金は被保険者=保険契約者(保険料負担者)という契約の生命保険金です。

例えば、親が保険料を負担していて親が亡くなった際に子に対して生命保険金が支払われる場合などです。

生命保険金は民法上、受取人固有の財産のとして取り扱われるため、本来は相続税のかかる相続財産ではありません。

しかし、お金の動きに着目すると、亡くなった人が保険料を負担し、その保険料を原資として保険金が支払われるため、相続税法ではみなし相続財産として、相続税の対象になってしまいます。

相続税対策なら一時払い終身保険に加入する

生命保険には終身保険、定期保険、養老保険と呼ばれる3種類の保険があります。

このうち定期保険と養老保険は保険金が支払われる期間が限定されているため相続税対策には向いていません。

相続税対策に向いているのは、終身保険です。

終身保険は保障が一生涯続くため、加入していれば亡くなった時に必ず受取人に保険金が支払われます。

そして一般的に相続税対策として活用されている保険は一時払い終身保険というものです。

一時払い終身保険は契約時に1回で保険料を払い込む終身保険で、自身の財産をすぐに保険に組み替えることが可能です。

また、生命保険は健康状態によっては加入できない場合もありますが、一時払い終身保険は審査がそこまで厳しくありません。

保険会社によっては契約年齢90歳まで加入できる商品もあるため、高齢の人でも相続税対策として加入できる可能性が十分にあります。

生命保険金が相続税の節税になる理由

相続税の非課税枠

生命保険金は残された家族の生活保障という大きな役割を担うことから、一定の非課税枠が設けられています。

次の計算式で算出した金額まで相続税が非課税になります。

〈非課税枠〉
500万円×法定相続人の数

生前に預貯金から保険料を支払い、生命保険金として受け取ることで、非課税枠が適用され相続税を少なくすることができます。

イメージとしては銀行にお金を預けて預貯金として相続するよりも、保険会社にお金を保険料として預けて、生命保険金として受け取ったほうがお得ということです。

これが生命保険が相続税の節税になる理由で、一番のメリットとも言えるでしょう。

どのくらい節税になるか具体例で検証

【前提条件】
相続人:子4人
相続財産:1.5億円

〈生命保険に加入しなかった場合〉
・1.5億円(相続財産)-5,400万円(基礎控除)=9,600万円(課税遺産総額)
・(9,600万円×1/4×15%-50万円)×4人=1,240万円(相続税)

〈生命保険に加入した場合(相続財産1.5億円のうち2,000万円は生命保険金)〉
・1.3億円(生命保険金以外の相続財産)+2,000万円(生命保険金)-2,000万円(非課税枠:500万円×4人)-5,400万円(基礎控除)=7,600万円(課税遺産総額)
・(7,600万円×1/4×15%-50万円)×4人=940万円(相続税)

生命保険に加入しなかった場合の相続税は1,240万円で、生命保険に加入した場合の相続税は940万円になります。

同じ相続財産1.5億円でも生命保険に加入し、非課税枠を適用するだけで相続税が300万円節税になります。

節税以外のメリット

生命保険金の非課税枠を適用すれば相続税の節税になるというメリットについては解説しました。

次は節税以外のメリットについて解説していきます。

相続税の納税資金になる

生命保険金は他の相続財産と異なり、相続が発生してから受取人が1人で手続きをしてすぐにお金を受け取ることができます。

亡くなった人の預貯金は口座が凍結された場合、お金を引き出すには相続人全員の印鑑証明書などが必要になるため、相続人1人では手続きを完結することが難しくなります。

また、生命保険金は生前贈与と異なり、生前にお金を渡すわけではないため、浪費される心配もありません。

そのため生命保険金を活用することで確実に相続税の納税資金に充てることができます。

遺産分割協議や遺留分の対象にならない

生命保険金は民法上、受取人固有の財産として取り扱われるため、遺産分割協議の対象になりません。

一定額の財産を確実に渡したいという相続人がいる場合には、その相続人を受取人に指定した保険契約を締結しておくと良いでしょう。

また、生命保険金は原則として遺留分の対象になりません。

遺留分とは相続人が相続財産を最低限相続できる権利のことで、原則として相続分の1/2の割合です。

もしも亡くなった人が特定の相続人に全財産を相続させるという内容の遺言書を残していたとしても、他の相続人が遺留分を請求してきた場合には、遺言書により全財産を相続する相続人は遺留分に相当する金銭を、遺留分を請求してきた相続人に渡さなければいけません。

このとき生命保険金は遺留分の計算の基礎となる相続財産に含まれません。

以上のようなことから、生命保険金は特定の相続人へ財産を残すうえで非常にメリットがあります

生命保険金受取人についての注意点

ここまで生命保険が相続税の節税になる理由やメリットについて解説してきました。

メリットが多い生命保険ですが注意点もあります。

それは生命保険金の受取人を誰にするかということです。

それではその点について解説していきます。

受取人は相続人でないと非課税枠の適用はない

生命保険金の非課税枠は受取人が相続人でないと適用できません。

受取人が相続人以外の場合や相続放棄をした人の場合は非課税枠の適用ができないため注意が必要です。

受取人は配偶者よりも子のほうが良い

生命保険に加入する人の多くは配偶者を受取人にしています。

配偶者は相続人のため、非課税枠の適用ができますが、配偶者が受取人というのは相続税の計算上、最適な選択とは言えません。

配偶者には「配偶者の税額軽減」と呼ばれる優遇措置が設けられていて、法定相続分又は1億6千万円のいずれか大きい金額までの相続については相続税がかからないためです。

そのため、配偶者が生命保険金の受取人になり、非課税枠を適用してもそこまで相続税の計算上、恩恵を受けることができません。

また、配偶者が受け取った生命保険金を使い切らずに亡くなってしまった場合、2次相続のときに相続税の負担が大きくなります。

そのような点を踏まえると受取人は配偶者よりも子のほうが良いと言えます。

孫が受取人になっている場合はデメリットが多い

「財産の移転を1代飛ばすことができるため相続税で有利になる」という話を聞いて、孫を受取人にしている場合があります。

結論から言うと、孫を受取人にするのは損をする可能性が高いです。

理由は次の通りです。

①非課税枠が適用できない

孫は原則として相続人ではないため非課税枠の適用が受けられません。

②相続税額の2割加算の対象になってしまう

配偶者と一親等の血族以外の人が相続や遺贈で財産を取得した場合、相続税額が本来の金額の2割増し(1.2倍)になります。

これを相続税額の2割加算と言います。

亡くなった人から見て孫は二親等の血族です。

孫が生命保険金の受取人になると相続税額の2割加算の対象になってしまい、相続税の負担が大きくなります。

③生前贈与加算の対象になってしまう

生前贈与加算とは相続開始前7年以内に贈与により取得した財産が、相続税の計算に加算されてしまう仕組みのことです。

例えば、相続開始1年前に相続人に対して100万円の贈与を行っていたとします。

そして相続時の財産が9,900万円だった場合、相続税の計算は1億円(9,900万円+100万円)で行うということです。

ただし、生前贈与加算は相続により財産を取得した人に適用される制度です。

孫は原則として相続人ではないため相続財産を取得することはありません。

そのため生前贈与加算も原則として適用されません。

しかし、孫が生命保険金の受取人になった場合、相続で財産を取得したものとみなされるため、生前贈与加算が適用されてしまいます。

本来、孫への贈与は相続税の生前対策として有効なものですが、孫を生命保険金の受取人にすると生前贈与加算が適用され、相続税の計算で損をしてしまう可能性があります。

受取人は子に変更しましょう

ここまでの話を聞いて受取人は子のほうが良いのは分かったけど、既に配偶者や孫を受取人にしてしまっている、という人もいるのではないでしょうか。

そのような場合は生前に受取人を子に変更しましょう。

難しい手続きはなく、保険会社に連絡して、必要書類を提出するだけです。

また、受取人変更時に何らかの税金が発生することはありません。

リビングニーズ特約で損をする可能性あり

リビングニーズ特約とは、被保険者の余命が6か月以内と医師から告げられた場合、生存中に死亡保険金の全部又は一部を生前給付金として受け取ることができる特約です。

受け取ったお金を残された時間で好きなことに使ったり、医療費に充てたりすることができます。

さらにこのリビングニーズ特約に基づく生前給付金は所得税が非課税になることからメリットが多い特約と言えるでしょう。

ただし、1つ注意点があります。

それは受け取った生前給付金を使い切らずに亡くなった場合は、その残額が相続税の対象になるということです。

この場合、残額に対して生命保険金の非課税枠は適用できませんので、相続後に生命保険金として受け取る場合に比べて相続税の計算上、損をする可能性があります。

リビングニーズ特約で生前給付金を受け取るかどうかは慎重に検討しましょう。

まとめ

本記事では生命保険が相続税の節税になる理由やメリット、注意点などについて解説しました。

要点をまとめておきましょう。

・生命保険金は相続税の対象になる

・相続税対策なら一時払い終身保険に加入する

・相続税の非課税枠(500万円×法定相続人の数)を活用する

・生命保険金は相続税の納税資金になる

・生命保険金は遺産分割協議や遺留分の対象にならない

・非課税枠は相続人が受取人でないと適用できない

・受取人は配偶者よりも子のほうが良い

・受取人が孫だとデメリットが多い

・リビングニーズ特約で生前給付金を受け取るかは慎重に判断する

相続税対策として生命保険へ加入を検討している人は1度税理士に相談してみるのが良いでしょう。

この記事を書いた人

東北税理士会 仙台北支部
税理士 高橋 祥太

大学在学中に相続税に強い税理士になることを決意。
その後8年をかけて税理士試験に官報合格。
これまで累計150件以上の相続税申告に携わりました。
お客様に依頼して良かったと思われるように日々、研鑽に励んでいます。

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